長崎市亀山社中記念館は、当時残されていた建物の古写真や間取り図、古文書の記録を徹底的に検証し、2009年に忠実な復元を果たした木造平屋建て(一部中二階)の施設です。展示スペースは決して広大ではありませんが、空間の隅々にまで当時の志士たちの緊迫した日常が再現されています。
館内に入ってまず目を奪われるのが、10畳の上段の間と8畳の次の間からなる主室です。床柱には、志士たちが激論を交わす中で付けられたとされる「刀の試し斬り痕」(伝承の再現)が残されており、議論が白熱した現場の空気が伝わってきます。
さらに見逃せないのが、天井裏に設けられた「中二階の隠し部屋」です。外部からは平屋に見える構造ですが、押入れの上部から登る屋根裏の隠し空間が存在し、幕府の隠密や役人の急襲に備えて志士が潜伏したり、密談を交わしたりしていたリアルな痕跡を観察できます。
資料展示コーナーでは、坂本龍馬が姉・乙女や兄・権平に宛てた直筆手紙の精巧な複製、龍馬が身に帯びていた「スミス&ウェッソン社製第2型拳銃」のレプリカ、愛用していた懐中時計、さらには亀山社中を結成した仲間たち(近藤長次郎、陸奥宗光、沢村惣之丞ら)の肖像写真や略歴パネルが詳細に解説されています。激動の時代に20代〜30代の若者たちが何を考え、どのように日本を動かそうとしていたのか、その息遣いが伝わる構成です。