安藤サクラと満島ひかりという二大才能が激突した原点といえば、2009年に公開された上映時間237分の怪作、映画『愛のむきだし』(園子温監督)を措いて他にありません。当時、満島はダンスボーカルグループ「Folder5」でのアイドル活動休止を経て俳優への本格転身を模索していた20代前半であり、安藤もまた父・奥田瑛二監督の作品などで頭角を現し始めた新進気鋭の若手でした。
当時の現場は、園子温監督による徹底的な追い込みと過酷な演出で知られていました。満島が演じたヒロイン・ヨーコは心に深いトラウマと聖母のような無垢さを抱え、安藤が演じたカルト教団の幹部・コイケは悪意と狂気を一身に背負った存在でした。現場で極限状態に置かれた二人は、台本を超えて肉体と感情を衝突させ、文字通り魂を削り合ってカメラの前に立ち続けました。
満島は当時の特番インタビューや手記のなかで、「サクラちゃんという恐ろしい才能が目の前にいたからこそ、自分自身の底にある感情を引きずり出すことができた」という趣旨の告白を残しています。一方の安藤も、満島が見せる凄まじい眼差しと集中力に圧倒され、表現者としての覚悟を決定づけられたと振り返っています。過酷な撮影現場で互いの弱さもエゴもすべて晒し切った体験は、単なる共演者という枠を超え、生涯にわたる「表現者としての戦友」の契りを交わす契機となったのです。