本作を語る上で欠かせないのが、映画史に残る屈指の名場面とされるラストシーンの真意です。敗戦後、戦犯として翌朝に処刑を控えたハラ元軍曹のもとを、かつての俘虜ローレンスが面会に訪れる場面です。
通訳を介さずとも英語でローレンスと穏やかに言葉を交わすハラは、かつての粗暴な軍人ではなく、死を静かに受け入れた一人の純朴な男の顔をしています。別れ際、収容所時代に泥酔した自分が二人を釈放したクリスマスの夜を思い起こすように、ハラはローレンスを呼び止め、満面の笑みで告げます。
「メリークリスマス、ミスター・ローレンス!」
このセリフの解釈については、公開当時から現在に至るまで多様な議論が存在します。一見すると過去の良き思い出を回顧する挨拶のようでありながら、その本質は「立場と価値観の絶対的な断絶を認識した上での、個人の赦しと和解」にあります。
軍国主義という狂気の構造の中にいた時は敵味方として傷つけ合うしかなかった二人が、国家の看板を剥ぎ取られた極限の死刑前夜において、初めて人間同士として完全に通じ合えた瞬間です。しかし同時に、その和解が訪れた時にはもはや処刑の運命を変えることはできないという、救いようのない哀哀と不条理が同居しています。ハラのあどけない笑顔と潤んだ瞳のアップで幕を閉じる演出は、観客に対して「正義とは何か、人間を隔てる壁とは何か」を鋭く問いかけます。