ワンハリ解説!衝撃の結末はなぜ?史実との違いとタランティーノの真意

ワンハリ解説!衝撃の結末はなぜ?史実との違いとタランティーノの真意

ワンハリ解説!衝撃の結末はなぜ?史実との違いとタランティーノの真意について見逃せない 注意点を厳選して解説いたします。

映画の終盤、深夜のシエロ・ドライブに現れたカルト教団の刺客たちが向かったのは、実在の女優シャロン・テートの邸宅ではなく、その隣に住む架空の俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)の自宅でした。そこで待ち受けていたのは、LSD染みのタバコでハイになったスタントマンのクリフ・ブース(ブラッド・ピット)と、愛犬のピットブル・ブランディ。侵入者たちは完膚なきまでに叩きのめされ、プールに逃げ込んだ狂信者はリックの映画用火炎放射器によって火だるまにされて絶命します。

現実の歴史において、妊娠8ヶ月だったシャロン・テートとその友人ら4人は、カルト指導者チャールズ・マンソンの信奉者たちによってナイフで滅多刺しにされ、無残に命を奪われました。この凄惨なシャロン・テート事件の真相を知る観客ほど、作中で不穏な時計の針が進むにつれて胃がキリキリと締め付けられるような恐怖を味わっていたはずです。しかし、スクリーンの中で起きたのは、悪辣な殺人鬼たちが痛烈に返り討ちに遭うという、あまりにも劇的な歴史の書き換えでした。

では、なぜタランティーノが結末を変えた理由はどこにあったのでしょうか。監督自身が米メディアのロングインタビューで明かした証言や制作手記によると、その動機は極めて純粋な「映画への信仰」と「シャロン・テートへの鎮魂」にありました。タランティーノにとって1969年という年は、自身が幼少期を過ごした古き良きハリウッド黄金期の象徴であり、あの事件こそが無垢な時代に冷酷なピリオドを打った元凶でした。もしもあの夜、隣家に腕っぷしの強い男たちが住んでいたら——。映画という表現形式だからこそ実現できる「失われた命の救済」こそが、クエンティン・タランティーノ監督の意図そのものだったのです。

惨劇を阻止した後、リックは隣家の門前でシャロンの友人ジェイ・セブリングに声をかけられ、門扉をくぐってテート邸の温かな光の中へと招き入れられます。シャロン本人が笑顔でリックを迎え入れ、抱擁を交わす。タイトルに掲げられた『ワンス・アポン・ア・タイム(むかしむかし)』という言葉通りの、おとぎ話のような優しい救済を描いたラストシーンの解釈と考察は、今なお多くの映画ファンの涙を誘っています。

前田 葵
著者

前田 葵

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。