Kerley B linesが確認された際、臨床現場で真っ先に疑うべき病態は左心不全に伴う肺うっ血および肺間質性浮腫です。心臓のポンプ機能が低下すると、左心房から肺静脈へと圧力が逆流し、肺毛細血管楔入圧(PCWP)が上昇します。この圧力が一定基準(通常15〜20 mmHg以上)を超えると、血管内から間質組織へと血漿成分が漏れ出し、小葉間隔壁が水浸しになってカーリー線が出現します。
しかし、原因は心臓疾患にとどまりません。小葉間隔壁が肥厚するメカニズムに応じて、多様な疾患が背景に隠れています。
主な原因疾患を整理すると以下のようになります。
・心原性肺浮腫・肺うっ血:虚血性心疾患、高血圧性心疾患、拡張型心筋症、僧帽弁閉鎖不全症・狭窄症などによるうっ血。
・癌性リンパ管症:肺癌、胃癌、乳癌などの腫瘍細胞が肺のリンパ管にびまん性に浸潤・閉塞し、リンパ浮腫と結節性肥厚を引き起こす病態。
・間質性肺炎・肺線維症:慢性的な炎症によって小葉間隔壁そのものが線維化し、不可逆的に肥厚するケース。
・腎不全・溢水(ボリュームオーバー):体液貯留による毛細血管圧の上昇。
・サルコイドーシスや塵肺:肉芽腫や粉塵の沈着によるリンパ路の障害。
特に心不全による浮腫は適切な利尿薬治療などで速やかに消失する「可逆性」を持つのに対し、癌性リンパ管症や線維化によるものは持続する「不可逆性」を示すという決定的な差異があります。