かつては学校最大の祝祭であった運動会が、なぜいま「廃止論」の俎上に載せられているのでしょうか。文部科学省の調査や教育現場の取材から見えてくるのは、学校と家庭を取り巻く環境の劇的な変化です。
第一の決定打となっているのが、運動会熱中症リスクの深刻化です。5月下旬や9月であっても最高気温が35度に迫る猛暑日が常態化するなか、屋外で長時間の競技や応援を強いることへの危険性が強く指摘されています。WBGT(暑さ指数)の基準値超えによる練習中断が相次ぎ、本番当日の救急搬送リスクを恐れる学校管理職は少なくありません。
第二に挙げられるのが、学校行事の働き方改革と運動会教員の負担問題です。運動会の準備期間中、教員は通常授業に加え、競技の企画・指導、入退場の動線設計、テント設営、グラウンド整備、地域・保護者対応に追われます。連日の残業や休日出勤が常態化し、教員の心身の疲弊が深刻化している実態が明らかになっています。
第三に、運動会親の負担と場所取りを巡るトラブルや心理的ストレスです。「前夜や早朝午前4時からの場所取り行列」「SNS上での撮影マナーを巡る保護者同士の摩擦」「共働き家庭における重い弁当作りやスケジュール調整のプレッシャー」など、保護者側からも「行事自体を簡素化してほしい」という声が噴出しています。
第四に、運動会組体操の危険性や過剰な安全管理への懸念です。重大な骨折や後遺症事故が社会問題化した組体操は多くの地域で縮小・廃止されたものの、いまだ怪我のリスクや練習にかける過大な時間への疑問視は根強く残っています。こうした運動会廃止の理由が複合的に重なり合い、従来の終日開催モデルは存続の危機を迎えています。