「正月料理でおせち以外といえば、すき焼きや寿司」――これが長年の常識でした。しかし、正月2日目から3日目にかけてのリアルな家庭の食卓を調査すると、これらの王道メニューを凌ぐ勢いで熱狂的な支持を集めている意外な料理が存在します。それが「正月カレー」です。
大手食品メーカーの消費動向分析や生活者アンケートでも、1月2日・3日に食べたいメニューの上位にカレーライスが毎年ランクインしています。なぜ、ハレの日の象徴である高級寿司やすき焼きではなく、日常食の代表格であるカレーがこれほど渇望されるのでしょうか。その真相は、人間の生理的な「味覚疲労のリセットメカニズム」にあります。
おせち料理は保存性を高めるため、砂糖、みりん、醤油を多用した甘辛い煮物や酢の物が中心となり、料理の温度も室温(冷たい状態)です。これらを2食、3食と食べ続けることで、脳の味覚センサーは甘味と旨味の単調さに疲弊します。そこに登場するスパイスの芳香、ピリッとした辛味刺激、そして湯気立つ温かさは、麻痺しかけた舌を劇的に覚醒させる最高のカンフル剤となるのです。さらに「年末年始の残った根菜や和風出汁を活用できる」「大鍋で作っておけば各自が好きなタイミングで温めて食べられる」という圧倒的なタイムパフォーマンスが、もてなす側の心理的負担を劇的に解放しています。
一方で、ごちそう感を損なわずに家族を唸らせる鍋料理として急浮上しているのが「カニしゃぶ正月レシピ」です。すき焼きほど脂が重くなく、昆布出汁にサッとくぐらせるだけで極上の贅沢感を味わえるため、胃腸が疲れ始めた三が日の夜に理想的な選択肢として支持を拡大しています。