片側のほうれい線に向き合うにあたり、絶対に軽視してはならないのが「重大な疾患の初期兆候との識別」です。単なる美容上のたるみではなく、神経障害によって突発的に片側のシワが変化することがあります。
臨床現場において最も厳格な鑑別が求められるのが、顔面神経麻痺ほうれい線違いです。ベル麻痺やラムゼイ・ハント症候群などの急性末梢性顔面神経麻痺が発症すると、顔の片側の筋肉が麻痺して脱力します。このとき、「麻痺した側のほうれい線が消失して平らになり、健康な側のほうれい線だけが引き攣れて深く見える」という逆転現象が起こります。「片側のシワが急に消えて若返った」と誤認して放置すると、数日以内に完全な運動麻痺に進行する危険性があります。
以下のチェックリストに該当する場合は、美容外科やエステではなく、直ちに神経内科または耳鼻咽喉科を受診してください。
- おでこのシワを寄せようとしたとき、片側だけシワが寄らない
- 目を強く閉じようとしても、片側の白目が残る(完全に閉じない)
- 口を「イー」と横に広げたとき、片側の口角が全く上がらない
- 水を飲んだときに、片側の口角から水分がこぼれ落ちる
- 味覚がおかしい、または耳の後ろにピリピリとした痛みを伴う
また、ネット上では「歯科矯正をするとほうれい線が深くなる」という噂が根強く飛び交っています。この歯科矯正ほうれい線変化の真相について日本矯正歯科学会の専門医らに取材すると、明確な事実関係が見えてきます。抜歯を伴う無理な前歯の後退を行った場合、口元の支持(テントの支柱の役割)が失われて皮膚が余り、両側のほうれい線が目立つケースは確かに存在します。しかし、左右の噛み合わせのズレを正し、下顎の偏位を治す矯正治療においては、左右非対称に偏っていた筋緊張が均等化され、片側だけ深かったほうれい線が緩和されるケースのほうが圧倒的に多いのが実情です。安易なネットの噂を鵜呑みにせず、精密なセファロ分析(頭部X線規格写真)を行う専門医に相談することが不可欠です。