入江杏さんのもう一つの重要な顔が、絵本作家・文筆家としての活動です。事件直後の過酷な日々の中で、言葉を失うほどの絶望に直面した彼女が、再び生きる力を取り戻す契機となったのが「物語を紡ぐこと」でした。
発表された代表作『ミシュカの森』をはじめ、『彩菜ちゃんのたまご』『兄のランドセル』といった絵本・児童書は、遺された子どもたちや深い悲しみを抱える読者に向けて、優しく語りかけるように描かれています。さらに自著『悲しみを生きる力にする』や『生きるちから――くじけそうな時のグリーフケア』などの著書では、加害者への怒りや司法への葛藤だけでなく、「癒えることのない傷とともに、いかにして尊厳を持って生き直すか」という根源的な問いが綴られています。
彼女の文章は、単なるお涙頂戴の手記ではなく、心理学的知見と実体験が高度に結びついた「喪失からの回復の記録」として、医療・福祉の現場でも推薦図書として広く活用されています。