本作における性描写は、単なる読者へのサービスカットではない。国家によって生殖を管理され、バーチャルな性処理マシン「電脳(MHC)」に依存することを強いられたディストピアにおいて、登場人物たちが交わす生身の交わりは、彼らが「人間であること」を証明するための最後の抵抗なのだ。
狂四郎と志乃の間に横たわる、凄惨極まりない現実と、それに抗う純愛。これを描くためには、目を背けたくなるような暴力と、生々しい性(エロス)の描写が不可欠であったと多くの文芸批評家は指摘する。記号化された美少女コンテンツとは一線を画す、血と泥に塗れた人間賛歌がそこにはある。