物語の発端は、北海道の山中に放置された朽ちたワゴン車から、死後1年以上が経過した男性の白骨遺体と、死後わずか3カ月ほどと見られる犬の遺骨が発見された事件に始まります。身元不明のまま葬られようとする遺体の足取りを、市役所の福祉課に勤める青年・奥津が辿る形で、生前の「お父さん」と愛犬ハッピーの過酷な旅程が明らかになっていきます。
かつては平凡ながらも家庭を持っていたお父さんですが、会社の倒産による失業、持病の悪化、そして妻からの離婚の申し出によって住まいも家族も失ってしまいます。唯一手元に残った愛車と、どんな時も無垢な瞳を向けてくれるハッピーだけを連れて、わずかな退職金を手に故郷を目指すあてのない旅に出ます。
しかし、道中で出会った家出少年に財布を盗まれるなど不運が重なり、旅は次第に困窮を極めていきます。病状が悪化し、所持金も底をついたお父さんは、北海道のキャンプ場跡地で愛車のハンドルを握ったまま静かに息を引き取りました。
ハッピーはお父さんが「動かなくなった」ことの意味を理解できず、ただ大好きなご主人の傍らに寄り添い続けます。周囲のゴミ捨て場からわずかな残飯を拾い、時に心ない人間に傷つけられながらも、季節が巡る中で遺体を守り続けました。そしてお父さんの死から約1年後、雪が降り積もる車内で、ハッピーもお父さんの亡骸に寄り添うようにして静かに天国へと旅立ちました。