前田大然を語るうえで、まず直視すべきはその並外れた身体能力です。公称50m走5.8秒台とされる圧倒的な初速はもちろん、彼を唯一無二の存在にしているのは「トップスピードを維持したまま、試合終了までプレスを掛け続けられる回復力」にあります。
初自叙伝『がむしゃら なぜ俺は、こんなに走るのか――。』の中で、前田自身は「自分よりも足が速いと感じた選手は今までいない」と述懐しています。この言葉は決して過信ではなく、科学的な走行データによっても裏付けられています。現代サッカーにおけるトッププロのスプリント回数は1試合平均15〜25回程度ですが、前田はコンスタントに35〜45回以上を記録。相手ディフェンダーがパスを出そうとした瞬間に視界から消え、次の瞬間には目の前に迫っているという心理的プレッシャーは、数字以上の破壊力を持っています。
単なる直線的なランニングだけでなく、相手センターバックとサイドバックのパスコースを同時に遮断しながら追い込む「プレッシングの角度」も研ぎ澄まされました。守備のファーストディフェンダーでありながら、瞬時に前線のターゲットへと姿を変えるプレースタイルは、日本代表の森保一監督のみならず、欧州の戦術家たちからも極めて高く評価されています。