大分県の気象に関して、インターネット上で最も蔓延している誤解は「九州にある県だから、冬でもそこまで寒くなく、通年で軽装で過ごせる」という南国バイアスです。
地理学的に見れば、大分県は瀬戸内海から日本海側に連なる空気の流れと、太平洋からの暖湿流がせめぎ合う結節点に位置しています。とりわけ冬季において、シベリア高気圧から吹き出す北西の冷たい季節風は、福岡・山口を抜けて豊後水道・別府湾へと吹き抜けます。この冷気が標高の高い由布岳・九重連山に吹き付けるため、標高500メートル前後の由布院盆地や飯田高原では、札幌や仙台に匹敵する氷点下の朝が連続することも珍しくありません。
「大分自動車道の由布院ICから別府IC間」は、冬季になると高頻度で冬用タイヤ規制やチェーン規制が敷かれます。ノーマルタイヤで九州横断を試みたレンタカーが走行不能に陥り、大規模な立ち往生を引き起こすトラブルが毎年報告されています。ネットの口コミで「12月でも別府はポカポカしていた」という断片的な情報だけを信じ、山越えルートの防寒・滑り止め対策を怠ることは、生命や安全に直結する重大なリスクです。
また、週刊天気予報や10日間予報の信頼性についても冷静な理解が求められます。気象庁が発表する週間予報の「適中率(予報の当たりやすさ)」は、山間複雑地形を抱えるエリアでは平野部に比べて統計的に低下する傾向があります。5日先、7日先の予報マークが「晴れ」であっても、日本海に低気圧が入るか太平洋に前線が停滞するかというわずかな気圧配置のブレによって、山間部では局地的な雨へと容易に転化します。「週間予報の大枠は把握しつつ、直前24時間は1時間ごとのメッシュ予報を追う」というリテラシーが不可欠です。