「ビスケットとクッキーの違いを即答できますか?」と聞かれた際、最も正確な回答は「日本では、クッキーはビスケットという大きな分類の中の特別な上位グレードである」という事実です。日常会話では同義語のように扱われますが、商品パッケージに「クッキー」と印字するためには、法的な根拠に基づく明確な数値基準をクリアしなければなりません。
根拠となっているのは、消費者庁および公正取引委員会の認定を受けた全国ビスケット公正取引協議会が定める「ビスケット類の表示に関する公正競争規約」です。この規約において、小麦粉などを主原料とする焼き菓子はすべて総称して「ビスケット」と定義されています。その上で、以下の条件を満たした製品に限り「クッキー」と表記することが認められています。
第一の条件は、糖分と脂肪分の合計が全体の40%以上を占めていること。第二の条件は、焙焼(ばいしょう)によって作られ、「手作り風の外観」を有していることです。つまり、バターや植物油脂、砂糖などを贅沢に使い、リッチな風味と手焼きのような素朴なテクスチャーを備えたものだけが、法的に「クッキー」を名乗る資格を得ます。
なぜ日本だけでこのような厳格なルールが敷かれたのでしょうか。全国ビスケット公正取引協議会の設立経緯を紐解くと、昭和40年代の流通混乱に行き当たります。当時、欧米から高級な洋菓子として輸入された「クッキー」は、庶民的な「ビスケット」に比べて高価格で取引されていました。これに目をつけた一部の国内業者が、配合の乏しい安価なビスケットに「高級クッキー」とラベルを貼って高値で販売する事例が頻発したのです。消費者を不当な誇大表示から守り、公正な競争環境を保つため、1971年に業界団体が主導して数値基準を策定したという歴史があります。