建て替え計画が公表された当初から、インターネット上や一部週刊誌では「埼玉県や臨海副都心への全面移転計画が存在するのではないか」という言説が飛び交いました。地価の高騰や受信料収入の構造的変化を背景に、都心一等地に巨大拠点を維持することへの批判的視座が移転説に拍車をかけた側面があります。
しかし、NHKの基本計画および経営委員会での議論の記録を精査すると、NHK放送センターの移転計画として他地域への完全移転が正式採用された事実はありません。現在地である渋谷区神南での現地建て替えが選択された背景には、極めて実務的かつインフラ面での必然性があります。
第一の理由は、国会や各省庁、総理官邸といった重要報道拠点への物理的なアクセス性と、首都直下地震などの広域災害発生時における取材・要員動員の即応力です。第二に、渋谷・原宿という文化発信の中心地であるロケーションが、音楽・芸能・ドキュメンタリーなどのコンテンツ制作ネットワークと深く結びついている点が挙げられます。
総事業費として示されている建て替え費用(約1,700億円規模)に対しても厳しい視線が注がれましたが、外部有識者による検証や設備仕様のスリム化を通じてコスト抑制策が講じられつつ、神南の地で次世代インフラを築く方針が維持されています。