ネット上の情報やSNSのまとめ投稿を見ていると、ヴィンテージ鑑定に関する危険な単純化が散見されます。最も典型的な誤解が、「羊が右を向いていればすべて70年代の白タグである」という思い込みです。
実際には、羊の向きが右に変わったのは70年代ですが、その後の80年代「紺タグ」や90年代の星条旗タグ、さらには2000年代以降のアーカイブ復刻ラインに至るまで、羊はずっと右を向いたままです。右向きという条件だけでは、1970年代から2020年代までの半世紀に及ぶ製品群を区別できません。重要なのは「右向きであること」に加えて、「白地のファブリックネームであるか」「ロゴのフォントにセリフ(飾りのヒゲ)があるか」「周囲の枠線のデザインがどうなっているか」という複合的な検証です。
もう一つの落とし穴が、「ウールリッチ USA製 見分け方」における表記の過信です。現代の感覚では「MADE IN U.S.A.の表記がなければアメリカ製ではない」と考えがちですが、1950年代〜1960年代以前のヴィンテージピースには、そもそも国境を越えた流通を想定していなかったため、原産国表示自体が省略された純然たるアメリカ製ウールシャツが膨大に存在します。
逆に、90年代後半から2000年代に製造された一部のプロダクトでは、「DESIGNED IN USA」や「FABRIC MADE IN USA(縫製はメキシコや他国)」といった紛らわしい表記が施されているケースもあります。タグの一文だけに飛びつかず、裏面のケアラベルや縫製仕様、ステッチの運針ピッチまで観察する視点が、偽物や誤認を回避するための防壁となります。