この名瀑の歴史は途方もなく古い。『古今和歌集』において、後嵯峨天皇の皇子をはじめとする歌人たちが「布留の滝」としてその清冽さを詠み上げた。千年前の貴族たちにとっても、この滝は京の都から遠く離れた憧憬の地であり、神仏が宿る水辺だったのだ。
時を下り、元禄元年(1688年)。俳聖・松尾芭蕉がこの地を訪れ、ひとつの句を残した。「春くのむ 桃の尾滝の 落ちてくる」と詠み、春の訪れとともに激しさを増す水勢に、生命の躍動を見出したとされる。芭蕉が立ち止まり、息を呑んだであろう同じ岩場に今、私たちが立っている。時空を超えて同じ水音を聴く体験は、歴史好きならずとも背筋が震えるはずだ。