家庭菜園や都市部のベランダ環境では、ミツバチやマルハナバチなどの訪花昆虫に受粉を依存するのは極めて高リスクです。確実な結実を狙うためには、手作業による人工授粉が欠かせません。しかし、「ただ花粉をつければ良い」というわけではなく、植物生理に基づいた厳格なタイムリミットが存在します。
極めて重要なのが、ズッキーニ雌花と雄花の咲くタイミングの見極めです。ズッキーニの花粉は非常にデリケートで、気温が上昇すると急速に受精能力を失います。気温が25℃を超える初夏〜盛夏期においては、朝9時を過ぎると花粉の発芽率が著しく低下するため、人工授粉の作業ウィンドウは「早朝日の出〜午前8時30分まで」が鉄則となります。
具体的なズッキーニ人工授粉のやり方は次のステップで行います。
まず、当日朝に開花した雄花を根元から摘み取り、花弁(花びら)を丁寧に外して雄しべ(葯)をむき出しにします。次に、開花している雌花の中心にある雌しべ(柱頭)へ、雄しべの花粉を優しくトントンと全体に均一になすりつけます。柱頭の3つ〜4つに分かれた房の全周に花粉が行き渡らないと、受粉した側の組織だけが肥大して実が曲がる「奇形果」の原因になります。花粉がしっかり付着すると、黄色い柱頭が白っぽい花粉で覆われた状態が確認できます。
雨天時は花粉が水分を含んで破裂し受精能力を失うため、前日の夕方に開花直前の雌花と雄花へ小さな紙袋やアルミホイルを被せて雨除けをし、翌朝受粉させた後に再度カバーをかけるといったプロ農家の雨除けテクニックが有効です。