インターネット上の掲示板やSNSでは、時折「サンセット・メモリーだけの一発屋」という短絡的なレッテルが貼られることがあります。しかし、この言説は音楽史的な文脈と実際のディスコグラフィを無視した完全な誤解です。
第一に、前述の通り杉村尚美はソロデビュー以前に「日暮し」のリードボーカルとして「い・に・し・え」という歴史的名曲をチャート上位に送り込んでいます。グループとソロという異なる名義で、全く異なるアプローチのヒット曲を2曲も音楽史に刻んだシンガーは極めて少数です。
第二に、「サンセット・メモリー」を作曲した木森敏之とのコラボレーションは、日本の劇伴音楽(サウンドトラック)とポップスの融合におけるパイオニア的作品でした。木森敏之は後に映画『キャバレー』や数々の名作ドラマ・アニメ音楽を手がけた天才作編曲家ですが、その壮大でシンフォニックな世界観を完璧に歌いこなせる歌唱力を備えていたのが杉村尚美でした。彼女の存在なくして、80年代初頭のドラマ主題歌の洗練と発展はあり得なかったのです。