日帰りや通過型の観光から、ぶどう畑のただ中で夜を明かす「滞在型ツーリズム」へのシフトが進んでいます。近年、信州ワイナリー宿泊を標榜する魅力的な施設が各地に誕生しました。
東御市や小諸市周辺では、自社ヴィンヤードに隣接したプライベートヴィラや、客室数わずか数室のオーベルジュが富裕層を中心に熱狂的な支持を集めています。夕暮れどき、茜色に染まる浅間山麓のぶどう畑を見下ろしながらアペリティフを楽しみ、夜には星空の下で熟成庫から出された特別なボトルを開ける体験は、日帰りツアーでは絶対に味わえない特権です。
朝目覚めると、朝露に濡れたぶどうの葉が朝陽にきらめき、静寂のなかで生産者が土壌を耕す音が響く――。ワインが「農産物」であることを五感で実感できるこの滞在スタイルは、都市部の生活に疲れた現代人にとって至福のリトリートとなっています。大手旅行会社関係者によると、「1泊2食付きで1人あたり5万〜10万円を超えるハイエンドなプランから予約が埋まっていく」という事実は、信州ワインが単なるアルコール飲料を超え、上質なライフスタイル体験として受容されている証左と言えます。