日本のマッチ産業は、かつて世界屈指の輸出量を誇る一大産業だった。その発展の基盤を支えた日本燐寸工業会の歴史を紐解くと、当時のグラフィックデザインがどれほど戦略的に作られていたかが良く分かる。
輸出用のマッチには、欧米の東洋趣味(シノワズリやジャポニスム)を意識した絢爛豪華なデザインが施され、国内向けには日常の親しみやすさを表現したポップな図柄が採用された。技術的制限の多い多色刷り木版や石版印刷の時代から、限られた色数でいかに強いインパクトを与えるかという挑戦が続けられていたのだ。
今日の博物館・美術館産業においても、こうした産業遺産をデザインの観点から再評価する動きが急速に広がっている。