暖簾の前で待つ客の列は、いまや各店舗の日常風景となりました。「中華そばそのだ」の人気の真相を一言で表すならば、「徹底的に作り込まれた大衆感と、専門店の領域を凌駕する料理のクオリティの融合」にあります。運営を手掛ける株式会社FENの創業者・園田亮平氏が仕掛けた空間設計は、昭和の大衆食堂が持っていた無骨な温かみを再構築したものです。しかし、単なるノスタルジーの消費で終わらない理由が、看板料理である一杯の丼に詰まっています。
取材現場でまず目を引くのは、U字やL字のカウンター越しに行き交う威勢のいい掛け声と、テキパキと麺を湯切りする厨房の緊張感です。提供される「中華そば」は、広島県東部のソウルフードである尾道ラーメンに強い敬意を払った設計となっており、瀬戸内産のいりこを効かせた出汁に濃口醤油、そして大粒の豚背脂ミンチが浮かびます。レトロなグラスで酒を煽る若者から、昼休みに黙々と丼に向き合う会社員まで、あらゆる属性の胃袋を等しく満たす包容力こそが、行列を生み出す最大のエンジンです。