離婚後の松雪泰子のキャリアは、まさに圧巻の一言に尽きる。一人息子を抱えながら、彼女は休むことなく映画や舞台、ドラマの最前線に立ち続けた。子育てと主演俳優という過酷な二重生活。その過密な日々が、彼女の演技に唯一無二の深みと凄みを与えていったことは想像に難くない。
2006年に公開された映画『フラガール』で見せた魂の演技は、日本アカデミー賞優秀主演女優賞をはじめ数々の賞を受賞。炭鉱町を救うために奮闘するダンス教師の凛とした強さは、過酷な現実を生き抜く彼女自身の芯の強さと見事に共鳴していた。
さらに2010年のドラマ『Mother』では、虐待される少女を連れ去り「母」となる道を選んだ女性の葛藤を痛切に演じきり、社会現象を巻き起こした。実生活での母としての実感、子どもへの無償の愛と責任感が、フィクションの壁を突き破り、視聴者の胸を締め付けた。彼女は私生活の痛手や孤独をすべて表現のエネルギーへと昇華させたのだ。