「改札機にスマホをかざす癖が抜けず、降りる時に激しいブザーが鳴って顔から火が出るほど恥ずかしかった」。鹿児島を訪れた首都圏在住の観光客から、SNSやQ&Aサイトには今もこのような手記が頻繁に投稿されています。JR鹿児島中央駅の在来線改札や新幹線改札口では、JR九州の「SUGOCA」はもちろん、SuicaやPASMO、ICOCAでのスムーズな出入場が日常の光景です。そのため、駅前広場に出て目と鼻の先にある市電の電停へ移動した瞬間、同じ感覚でカードをかざしてしまう利用者が後を絶ちません。
鹿児島市電では、プラスチックカードのSuicaはもちろんのこと、iPhoneやAndroidに登録されたモバイルSuica利用不可という厳然たる仕様が続いています。車内の運賃箱に設置されたICカードリーダーは、鹿児島独自の「Rapica(ラピカ)」およびいわさきコーポレーションが発行する「いわさきICカード」専用の規格であり、全国相互利用カードを物理的・システム的に読み取ることができません。電停での案内サインにも「Suica等の交通系ICカードはご利用になれません」と赤字で注意喚起が掲示されていますが、キャッシュレスに慣れ親しんだ都市部からの来訪者ほど、この警告を見落としがちです。
現場の運転士に状況を聞くと、「観光シーズンになると、1運行につき数回はSuicaのエラーによる対応が発生します。後ろのお客様がお待ちになる中で慌てて財布から小銭を探される姿を日常的にお見かけします」と語ります。現在、鹿児島市電の普通運賃は大人170円・小児80円(均一運賃)。財布の中にちょうど170円の硬貨があれば問題ありませんが、千円札しか手持ちがない場合は降車時に両替機を通す必要が生じ、車内に焦燥感が漂う要因となっています。