実務で多くの人が立ち往生するケースに、「相手が複数の役職を兼務している場合」と「社内ルールの変更に伴う役職省略」がある。
役職兼務のケース:どちらの役職を書くべきか?
社内メール役職兼務の書き方には、明確な判断基準が存在する。兼務している上長へ連絡を入れる際、宛名をどう書くべきかは「そのメールの用件がどちらの役職に紐づいているか」で判断する。
- 用件が特定部署に限定される場合:関連する役職のみを記載する(例:営業本部の案件であれば「営業本部長 田中様」)。関係のないもう一方の役職(例:開発部担当役員など)を省略しても失礼には当たらない。
- 全社的な重要事項、または兼務する双方に関連する場合:正式な役職を併記するか、上位の役職を優先する(例:「営業本部長 兼 開発担当役員 田中様」、または単に上位である「役員 田中様」)。
「さん付け運動」と社内メール役職省略ルールのギャップ
近年、フラットな組織風土の醸成や心理的安全性の向上を目的に、社内メール役職省略ルール(いわゆる「さん付けルール」)を制度として導入する企業が急増している。役職による心理的障壁を取り払い、建設的な発言を促す狙いだ。
しかし、制度の導入と現場の心理には大きな温度差が存在する。取材した情報通信企業では、会社が「社内はすべて役職抜きで〇〇さん付けに統一」とアナウンスしたにもかかわらず、現場では「役員や気難しいベテランには、依然として役職を付けて送らないと角が立つ」という忖度ルールが暗黙のうちに維持されていた。
カルチャーの過渡期にある組織では、公式ルールを過信せず、周囲の先輩社員が上長に対してどのような敬称を用いているかを観察し、組織の「実質的なトーン」に波長を合わせることが自己防衛の観点から欠かせない。