『おさるのジョージ』の物語は、単なる微笑ましい児童文学にとどまらない劇的な歴史的背景を持っています。原作は、ユダヤ系ドイツ人のハンス・アウグスト・レイ(H.A.レイ)とマーガレット・レイ夫妻によって生み出された絵本『ひとまねこざる』(原題:Curious George)です。日本国内では1954年に岩波書店から翻訳版が刊行され、長きにわたり読み継がれてきました。
夫妻が1940年にフランス・パリで暮らしていた当時、ナチス・ドイツ軍の侵攻が迫っていました。夫妻は市内にあった部品をかき集めて2台の即席自転車を組み立て、わずかな所持品と『ひとまねこざる』の手描き原稿を鞄に詰め込み、陥落直前のパリを脱出しました。数千キロに及ぶ逃避行の末、スペイン、ポルトガル、ブラジルを経てアメリカ・ニューヨークへと亡命を果たした歴史的事実は、関係者の手記や当時の取材記録にも克明に記されています。
戦火という極限の暗闇の中で守り抜かれた「好奇心と無邪気さ」こそが、80年以上を経た現在も世界中の子どもたちに勇気を与え続けるジョージの原動力となっています。