表現の歴史を遡れば、近代小説の金字塔を打ち立てたミゲル・デ・セルバンテスの作中にも、空間の緊迫感や登場人物の立ち位置を描写するための対比的な空間表現が頻出する。古典文学における厳密な語彙の選定は、作品の持つリアリティを支える基盤であった。
その伝統は現代のクリエイターにも受け継がれている。映画監督ペドロ・アルモドバルの作品群を鑑賞すると、マドリードの色彩豊かな街並みや室内の対話劇において、「aquí」という短く鋭い響きがキャラクターの感情や対立を際立たせる道具として鮮烈に使われていることがわかる。