19世紀後半、ジャポニスムの波に乗って浮世絵が海を渡ると、『蛸と海女』は西洋の前衛芸術家たちに絶大な衝撃を与えました。
とりわけ有名なのが、パブロ・ピカソが本作に強いインスピレーションを受けたという事実です。ピカソは浮世絵コレクターでもあり、晩年に遺した奔放なエロティシズムを描いたデッサンや版画群には、北斎のタコと海女の構図が色濃く反映されています。また、彫刻家オーギュスト・ロダンや画家フェリシアン・ロップスらも本作を絶賛し、人間の無意識の欲望を具現化した前衛的表現として高く評価しました。
さらに現代においては、アニメや漫画で世界的に知られる「触手表現の元祖」として国際的なポップカルチャー研究の文脈で必ず引用される存在となっています。エロティシズムと異形クリーチャーの融合という北斎の発想は、200年の時を超えて世界の視覚文化の根底を形作っています。