「少しくらい音が鳴っていても普通に走れる」という過信は、突発的な大事故へのカウントダウンを意味します。ドライブシャフト異音を放置するリスクの根本には、蛇腹状のゴムや樹脂でできた防塵・潤滑保護パーツであるドライブシャフトブーツの破損とグリス漏れがあります。
経年劣化や紫外線、屈曲疲労によってブーツに亀裂が生じると、遠心力によって高粘度のモリブデングリスがホイールハウス内に激しく飛散します。グリスが抜けたジョイント内部には路面の雨水、砂利、微小なゴミが侵入し、ヤスリをかけたかのように金属表面を研磨・削り取っていきます。油膜切れによる金属同士の異常摩擦は急激な発熱を招き、最終的にはジョイントが焼き付いてロックするか、あるいは粉砕してシャフトがハブから脱落します。走行中にシャフトが脱落すれば、車道にシャフトが突き刺さる「ポールヴォールト現象」を引き起こし、横転事故や対向車線への飛び出しといった壊滅的惨事に至ります。
当然ながら、法令上のハードルも極めて厳格です。道路運送車両の保安基準第14条に基づき、足回りの機能維持と油脂類飛散防止が義務付けられているため、ドライブシャフト異音やブーツの破れは車検に通らない決定的な理由となります。車検場では検査官がリフトアップ時にブーツの全周を目視および触診で確認し、たとえ数ミリのピンホールやわずかな滲みであっても、その場で即座に不合格判定を下します。放置したまま車検をパスすることは物理的に不可能です。