巨大な翼で見る者を圧倒するフィリピンオオコウモリですが、その存続基盤は極めて脆弱な状態に追い込まれています。国際自然保護連合(IUCN)が策定するレッドリストにおいて、オオコウモリは絶滅危惧種(Endangered:絶滅危惧IB類)として現在も厳重な保護指定下に置かれています。
現地保護機関の長期モニタリングによると、過去30年間でフィリピンオオコウモリの総個体数は50%以上も激減したと推計されています。激減をもたらした構造的要因は主に以下の3点に集約されます。
- 生息域の原生林消失:プランテーション開発や農地拡大、違法伐採によって、彼らがねぐら(ルースト)として依存する樹齢の高い高木林が急速に破壊されたこと。
- 食用目的の密猟(ブッシュミート):先住地域や貧困層における貴重なタンパク源、あるいは珍味として、巣に集まる個体が網や銃器で乱獲されてきた歴史。
- 観光開発による攪乱:ボートツアーや過度なエコツーリズムにより、昼間の休息環境が脅かされ、繁殖率の低下を招いていること。
フィリピン政府や環境NGOは現在、島内に保護区を設定し、エコツーリズムのガイドライン強化や密猟パトロールを展開しています。かつては数千頭規模で夜空を覆ったとされる大群は今や姿を消しつつあり、現地の熱帯雨林と生物多様性を守るための正念場を迎えています。