事故直後から現在に至るまで、インターネット上で最も頻繁に囁かれてきたのが「自衛隊関与説」です。具体的には「相模湾で演習中だった海上自衛隊の護衛艦から訓練用ミサイルまたは無人標的機が誤射され、123便の垂直尾翼に激突した」「自衛隊が証拠を隠滅するために救助を遅らせた」という言説です。しかし、これらは客観的事実と照合した瞬間に破綻します。
陰謀論者がしばしば名指しする護衛艦「まつゆき」は、事故当日である1985年8月12日時点では海上自衛隊に就役していませんでした。同艦は石川島播磨重工業東京第一工場で建造中であり、公試(性能試験)を行っていた段階です。兵装の射撃管制装置や実弾・標的機の発射能力は備わっておらず、自衛隊員ではなく造船所関係者が乗り組んでいました。存在しない艦艇からミサイルが発射されることは物理的にあり得ません。
また、「自衛隊のオレンジ色の標的機(チャカRなど)が衝突した」という説や、コクピットボイスレコーダー(CVR)の「オレンジエア」という聞き間違いとされる音声についても、詳細な科学鑑定によって否定されています。相模湾海底から引き揚げられた垂直尾翼の残骸や、御巣鷹の尾根に残された機体破片から、火薬反応や他機・ミサイルとの衝突痕、塗料の付着などは一切検出されていません。
近年では、スローニュースによる調査報道ドキュメンタリーや独立系メディアのファクトチェックによって、当時流布した「目撃証言の歪曲」や「自衛隊犯行説の論理矛盾」が次々と暴かれています。さらに国会においても、自衛隊関与を唱える書籍の図書館配架をめぐる議論の中で、根拠のない陰謀論が公衆に与える誤解について防衛当局から明確な否定見解が示されています。