噂の直接的な引き金となった「あたしンち死亡エピソード元ネタ」は、2012年3月11日付けの読売新聞日曜版に掲載された原作漫画の最終回、第760話「はなはだ、とーとつですが」です。
1994年6月から足かけ17年11カ月にわたって連載され、日本中の朝の食卓を和ませてきたタチバナ家の物語。読者が期待したのは、家族4人の変わらぬ笑顔や、みかん・ユズヒコの成長を感じさせる心温まる大団円でした。しかし、作者のけらえいこ氏が描いたラストシーンは、読者の予想を根底から覆すものでした。
最終話において、母は買い物帰りの商店街でふと足を止め、家族や町内への感慨に浸ることもなく、何の脈絡もなくふわりと身体を浮かせ、そのまま大空の雲の彼方へと飛び去ってしまうのです。地上に残されたみかんやユズヒコ、父は、豆粒のように小さくなっていく母を見上げながら呆然と見送るだけで物語の幕が降ろされました。
このシュール極まりない幕切れを目にした当時の読者からは、次のような困惑の声が続出しました。
「お母さんが空へ昇っていった……これって天に召された(死亡した)暗示なのでは?」
「何か不治の病で亡くなった母を、家族が見送るメタファー(隠喩)なのではないか」
日常のリアリズムを丁寧にすくい取ってきた作品だからこそ、突如として放り込まれた不条理なラストが読者の心理的バウンダリーを揺るがし、「母の死」という過激な解釈へと飛躍してしまったのです。