日常生活や冠婚葬祭の現場で誰もが耳にしたことのある有名曲には、それぞれ誕生のきっかけとなったドラマが存在します。
1. 讃美歌312番『いつくしみ深き』(What a Friend We Have in Jesus)
日本のキリスト教式結婚式で最も歌われている名曲です。結婚式の明るい雰囲気で親しまれていますが、原曲の誕生背景は極めて過酷な試練の中にありました。作詞者のジョセフ・スクライヴェンは、結婚前日に婚約者を水難事故で失い、その後再婚を決めた新たな婚約者も病で亡くすという悲劇に見舞われます。絶望の底で彼を支えたのがキリストへの祈りであり、遠く離れたアイルランドで病床にある母を慰めるために送った私的な詩が、この讃美歌の歌詞となりました。「いかなる試練や悲しみの中にあっても、すべてを祈りによって神に委ねる」という不変の信頼が歌われています。
2. 『アメイジング・グレイス』(Amazing Grace / 讃美歌第二編167番)
世界で最も有名な讃美歌のひとつ。作詞者のジョン・ニュートンは、若き日に奴隷船の船長として非人道的な奴隷貿易に手を染めていました。大嵐で船が難破しかけた際、神に命乞いの祈りを捧げて奇跡的に生還したことを機に回心。後に牧師へと転身し、「かつて罪人であった自分のような者にも注がれた、驚くべき神の恵み(Grace)」への感謝を綴ったものが本作です。
3. クリスマスを彩る名曲群
- 『きよしこの夜』(Silent Night / 讃美歌109番):1818年、オーストリアの小さな村の教会で、壊れたオルガンの代わりにギター1本で演奏するために誕生。素朴で純粋なイエス降誕の夜を描き出しています。
- 『もろびとこぞりて』(Joy to the World / 讃美歌112番):救い主の誕生を全地が歓喜をもって迎えるダイナミックな名曲。ヘンデルの楽曲『メサイア』の旋律に着想を得て作られたとされています。
- 『荒野の果てに』(Gloria in Excelsis Deo / 讃美歌106番):フランス発祥のキャロルで、夜勤の羊飼いたちに天使が救い主の誕生を告げた場面を華やかに歌い上げます。