新米の収穫期を過ぎても価格が下がらない背景には、一過性の需給パニックにとどまらない構造的な問題が存在します。主な要因は次の3点に集約されます。
第一に、生産資材と物流コストの歴史的な高騰です。化学肥料の原料価格やハウス・乾燥機を動かす重油代、さらに「物流の2024年問題」に伴う輸送コストの上昇が、生産現場を圧迫し続けています。これまでの米価では農家が赤字を垂れ流す状態に陥っていたため、持続的な営農を維持するための価格転嫁が避けられない局面を迎えました。
第二に、農業協同組合(JA)が生産者に前払いする「概算金」の大幅な引き上げです。前年の米不足を受けた集荷競争の激化により、各産地のJAは民間業者への米の流出を防ぐため、概算金を前年比で2〜4割以上引き上げました。この仕入れ段階のコストアップが、最終的な小売価格を底上げしています。
第三に、農林水産省の備蓄米放出に対する慎重姿勢です。当時、市場への放出を求める声が相次いだものの、政府は「主食用米の総量自体は不足していない」「市場価格を乱暴に下落させると将来の生産基盤を損なう」として、緊急放出を行いませんでした。この需給調整方針が、市場全体の強気な価格設定を後押しする結果となりました。