ネット上の掲示板やSNS、知恵袋には、wearとput onを取り違えて気まずい思いをした日本人学習者のリアルな体験談が数多く投稿されています。外資系IT企業に勤務する30代の日本人男性は、海外オフィスの同僚とのZoom会議前の出来事を次のように振り返っています。
「朝のオンラインミーティング直前、同僚から『カメラをオンにしてくれ』と言われ、私は慌てて『Wait, I'm wearing a shirt now!(待って、今シャツを着ているところだ)』と返してしまったんです。同僚は一瞬フリーズした後、『シャツを着ているなら何が問題なんだ?』と大笑いされました。あとからネイティブの上司に、その英語だと“シャツをすでに着用している状態”を説明しているだけで、着替え中であることは全く伝わらないと指摘されました。正しくは『I'm putting on a shirt.』でした」
この失敗談はまさに、進行形(-ing)に対する日本語感覚のズレを象徴しています。日本語の「〜を着ている」は、「彼はスーツを着ている(状態)」と「彼は今スーツを着ている最中だ(動作進行)」の両方に同じ動詞を使えます。しかし英語では、wearを進行形にしても「動作の最中」にはならず、「(一時的に)その服を身につけている状態」を強調するだけにとどまります。たとえば「She is wearing a red dress today.」は、「彼女は今日、赤いドレスを着ている(状態)」という意味であり、今まさに赤いドレスを被っている最中という意味には絶対になりません。
北米の語学学校で長年指導にあたるベテラン講師は、取材に対してこう証言しています。「日本からの留学生が最も頻繁に間違えるのが、外出前の玄関での一言です。寒い日に友人に『Wear your gloves!』と言ってしまう。私たちは手袋をはめる動作を求めているので、身体が反応するのは『Put on your gloves!』です。言葉の選び方一つで、相手が感じる情景のリアルさがまったく変わってしまいます」