「墨汁の油分を落とすために石鹸やシャンプーを使ってもいいのか」という疑問は、書道初心者の間で非常によく交わされる話題です。結論から言えば、一般的な石鹸や人間用シャンプーによる毛筆の手入れは原則として避けるべきです。市販の洗剤は脱脂力が強すぎるため、獣毛が本来持っている適度な油分を奪い去り、毛のパサつきや毛切れ、穂先が割れる致命的な原因となります。
では、なぜしっかり水洗いしたつもりでも習字の筆の根元が固まる理由が生じるのでしょうか。その正体は、毛の奥深くに浸透した墨液に含まれる「膠(にかわ)」や「合成樹脂エマルジョン(固着剤)」の残留です。
学校教育の現場や書道教室のアンケート調査などでも、筆のトラブルの約7割が「根元のすすぎ残し」に起因していると報告されています。表面の黒い水が出なくなった時点で洗うのをやめてしまうと、根元に溜まった樹脂が乾燥とともに接着剤のように固化し、毛筆が根元から割れる原因となってしまいます。日常のお手入れは流水による揉み洗いが基本であり、頑固な墨汚れをリセットしたい場合は、毛の油分を守る専用の書道筆クリーナー「筆シャン」などを適切に活用するのが賢明です。