暗証番号の失念と並び、実務上で極めて深刻なトラブルを引き起こしているのが、転居や婚姻に伴う「証明書の自動失効」です。マイナンバーカードを所持したまま引越しを行い、転入先の自治体窓口で住民票の異動手続き(転入手続き)を完了させたとしても、それだけでは署名用電子証明書は使えません。
署名用電子証明書には、氏名・住所・生年月日・性別の「基本4情報」がデータとして直接埋め込まれています。印鑑登録証明書に旧住所が記載されていては契約書に使えないのと同様、住民基本台帳の住所や氏名が書き換わった瞬間、セキュリティ維持の観点から署名用電子証明書は法的に即時自動失効する設計になっています。
ここで多くの市民が陥る罠が、「転入届の窓口でマイナンバーカードの券面記載事項を変更してもらったから完了した」という思い込みです。券面の住所が新住所に書き換わっても、ICチップ内部の署名用電子証明書は失効したままです。窓口で「署名用電子証明書の再発行(新規発行)」を併せて申請し、改めて暗証番号を設定し直さなければ、機能は復活しません。
自治体の窓口担当者が転入手続き時に失効の事実を丁寧に案内し、その場で再発行を促す運用が徹底されつつありますが、多忙な引っ越し当日に「確定申告はまだ先だから」と後回しにしてしまい、翌年の申告時期に初めて「電子証明書が失効しています」というエラーメッセージを見てパニックに陥る相談者が後を絶ちません。有効期限切れ(カード券面記載の有効期限とは別に、電子証明書自体の有効期限は発行から5回目の誕生日)を迎えた際も同様の手続きが必要となります。