騒動の発端となったのは、2020年2月下旬、未知の感染症への不安が急速に高まっていた時期に投稿されたSNS上の短い文言でした。「トイレットペーパーやティッシュペーパーは中国で製造されているため、輸入が止まって手に入らなくなる」「マスクと同じ原料を使っているため、今後は生産されなくなる」といった根拠のない投稿がX(旧Twitter)上で投下されたのが直接の引き金です。
このトイレットペーパーとマスクの原料に関する誤解は、瞬く間に拡散されました。当時、医療用マスクが深刻な品薄に陥っていたため、「次は紙類が消える」という連想が人々の危機感と結びつきやすかった土壌があります。報道各社の追跡取材によると、発信源となった投稿主の一人は後に勤務先を通じて謝罪文を公表する事態に発展しましたが、一度放たれた誤情報はアルゴリズムとユーザーの不安を燃料にして歯止めが利かなくなりました。
ネットの反応を時系列で分析すると、初期段階では「そんなデマに騙されるな」という注意喚起の投稿が多数を占めていました。しかし、SNSの誤情報拡散の仕組みにおいて皮肉だったのは、「デマだから買い占めないで」という善意の否定・警告ポストが画像付きで拡散された結果、タイムライン上が「トイレットペーパー」という単語と「空の棚の画像」で埋め尽くされ、かえって人々の焦燥感を煽る逆効果を生んでしまった点です。