スーパーの鮮魚売り場や寿司店で、刺身の下や横に必ずといっていいほど大葉が添えられている光景を目にします。「単なる彩りや仕切り」「食べずに捨てるもの」と受け止める人も少なくありませんが、この習慣には古人の知恵と現代科学に裏打ちされた合理的な理由が存在します。
大葉特有の爽快な香気をもたらす主成分は、精油成分の5割以上を占める「ペリルアルデヒド(しそアルデヒド)」です。水産加工や食品微生物学の研究機関による実証データでも、ペリルアルデヒドには強力な抗菌・防腐作用があることが判明しています。冷蔵技術が未発達だった江戸時代から、生魚の腐敗菌の繁殖を抑え、食中毒を予防するために大葉が「つま(妻)」として添えられてきた背景があります。
さらに、ペリルアルデヒドには嗅覚を通じて胃液の分泌を促し、消化吸収を助ける健胃作用も備わっています。市場関係者や寿司職人の証言によれば、「大葉の裏側にある細かな腺毛(せんもう)が破れることで香りと薬効成分が揮発するため、軽く叩いてから刺身に添えたり、刺身と一緒に巻き込んで食べることこそが本来の理にかなった食べ方」とされています。単なる飾りとして残してしまうのは、衛生面からも栄養面からも極めて惜しい行為と言えます。