ウェブやSNS上には「こめかみを強く揉めば頭痛が消える」「側頭筋をゴリゴリ削るようにほぐすマッサージ」といった過激なコンテンツが散見されますが、これは医学的に極めてリスクの高い行為です。
側頭筋は頭蓋骨の薄い側頭鱗の上に直接乗っている非常にデリケートな筋肉であり、その直下や表面近くには浅側頭動脈や三叉神経・耳介側頭神経が走行しています。強い力でゴリゴリと揉む行為は、微小な筋繊維を断裂させて筋硬結を悪化させるだけでなく、神経を直接刺激して難治性の神経障害性疼痛を引き起こす危険性をはらんでいます。
安全にアプローチするためには、押すのではなく「掌全体で包み込むように緩める」のが鉄則です。効果的な側頭部のツボとマッサージとして推奨されるのは以下の手順です。
- 太陽(たいよう):眉尻と目尻の中間から、やや外側の骨のくぼみにあるツボ。指の腹を当て、息を吐きながら「痛気持ちいい」と感じる程度の弱圧で5秒間押し、ゆっくり離す。
- 率谷(そっこく):耳の一番高い位置の真上、指幅2本分ほど上がった場所。側頭筋の緊張緩和に優れる。指先ではなく手のひらの肉厚な部分(手根部)を当て、頭皮を頭頂部へ持ち上げるように優しく円を描いて回す。
マッサージを行う際、血管がドクドクと脈打って拍動性の痛みが増す場合は片頭痛の疑いがあるため、即座に中止して患部を冷水タオル等で冷やす必要があります。逆に、重だるい緊張型頭痛であれば蒸しタオルで後頸部から側頭部を温めるのが効果的です。
【プロの結論】受診を急ぐべき人・セルフケアで様子を見てよい人の判断基準
迷った際に自分の身体が出しているサインを客観的に判断するための境界線を提示します。以下の基準に照らし、自身の優先度を直ちに判定してください。
【即座に医療機関へ行くべき人(セルフケア厳禁)】
・50歳以上で、ここ数週間〜数カ月で新たに側頭部の痛みや血管の硬直・腫れが現れた人
・側頭部の痛みに加えて「食事中に噛んでいるとあごが痛くて噛み続けられない(咀嚼跛行)」症状がある人
・片側の目が見えにくい、物がかすむ、二重に見える、視野が欠けるなどの視覚異常を伴う人
・ピキピキとした痛みが顔面や後頭部にも激しく走り、触れるだけで飛び上がるような人
・発熱(37度台後半以上)、だるさ、急激な体重減少など全身症状を伴う人
【セルフケアで数日間様子を見てよい人】
・両側または片側の側頭部に、デスクワークやスマホ操作の後だけ重だるいコリを感じる人
・手で優しくほぐしたり、入浴して首や肩を温めたりすると痛みが和らぐ人
・あごの開閉で軽いクリック音はあるが、激痛や開口不能などの機能障害がない人
・睡眠を十分にとることで症状が軽減する人