炎天下の外出やスキー場からの帰宅後、数時間が経過してから急激な目の痛みや激しい充血に襲われる現象には、明確な病理学的プロセスが存在します。いわゆる「雪目(雪盲)」や紫外線角膜炎と呼ばれるこの症状は、紫外線B波(UV-B)が眼球の最表面にある角膜上皮細胞を直接傷つけることで引き起こされます。
皮膚が日焼けした数時間後に赤くヒリヒリ痛むのと同様に、角膜上皮細胞が紫外線のエネルギーによって光化学的な損傷を受けると、細胞が壊死・剥落して細かな傷(点状表層角膜症)が無数に発生します。角膜は人体の中でも知覚神経(三叉神経)が極めて密に分布している組織であるため、上皮がめくれて神経が露出することにより、激しい異物感や突き刺すような痛み、大量の涙が生じるのです。さらに、組織の損傷を修復しようと血流が急増し、結膜の毛細血管が著しく拡張することで、白目全体が鮮明な赤色に染まります。
日本眼科学会などの専門家組織も警鐘を鳴らす通り、紫外線による角膜ダメージの放置は極めて危険です。露出した角膜創面から細菌や真菌が侵入すれば、重篤な角膜感染症や角膜潰瘍に進行し、不可逆的な視力低下を招く恐れがあります。また、長年にわたる無防備な紫外線被曝の蓄積は、白目が黒眼に侵入する翼状片(よくじょうへん)や老人性白内障の発症リスクを跳ね上げることが疫学調査でも立証されています。「寝れば治るだろう」という安易な自己判断は禁物です。