貧困と旅回りの生活の中で磨かれた歌声が見出されたのは、夜の繁華街だった。作詞家でありプロデューサーの石坂まさをに見抜かれた才能は、1969年、センセーショナルなシングル『新宿の女』で花開く。RCAレコードからリリースされたこの作品は、従来の演歌の枠組みを根底から覆す異彩を放っていた。
当時の日本は、万国博覧会の開催に象徴される熱狂の渦中にあった。しかし、きらびやかな都市の陰には、地方から上京し孤立する若者たちの寂寥感が渦巻いていた。彼女が歌う夜の歌謡曲は、そうした人々の心の叫びを代弁する聖歌となったのである。