「収録のたびに声が出なくなるかもしれないという恐怖と戦っていた」――梶裕貴は当時のアフレコ現場をそう振り返る。エレンが巨人に立ち向かい、感情を爆発させる叫びのシーンでは、喉の血管が浮き上がり、実際に血の味が口の中に広がることも日常茶飯事だった。小手先の技術で声をコントロールする余地など一切ない。全身の筋肉を硬直させ、自らの命を削るようにしてマイクにぶつかるほかなかった。
特に物語の結末に向かうにつれ、エレンの背負う重圧は想像を絶するものとなった。仲間を突き放し、世界を敵に回す孤独な道を選んだ少年の心境と同調するあまり、梶自身も収録期間中は私生活において深い孤独感に苛まれたと明かしている。演じ終えた瞬間に去来したのは、達成感よりも途方もない喪失感と静寂だったという告白は、彼が単にキャラクターを演じたのではなく、エレン・イェーガーという人間そのものとして生きた証拠だ。