本作の根底に流れる「殯」という概念は、死を即座に日常から隔離・排除する現代社会に対する鋭利な問いかけでもある。かつての日本人が持っていた、生と死が曖昧に混ざり合う時間と空間。肉体は滅びても、残された者がその死を自らの内側に受け入れ、昇華させるまでには、森を彷徨うような猶予が必要なのだ。
しげきが妻の幻影を探し求め、真千子が溢れ出る涙とともに自分自身の生を再確認する瞬間、死者は決して遠い世界の住人ではなく、生者のすぐ隣で風となって息づいていることに気づかされる。自然の圧倒的な循環の中に人間を配置することで、この作品は観客自身の心の奥底に眠る「手放せない悲哀」を優しく解きほぐしていく。