十割そばのポテンシャルを100%引き出すには、食し方にも流儀があります。提供された直後から時間との勝負が始まります。十割そばは二八そば以上に水分の吸放出が激しく、配膳から数分で風味が揮発し、麺同士がくっつきやすくなるためです。
最初の一口は、「つゆをつけずにそのまま手繰る」、あるいは「ひとつまみの粗塩」を麺の端に少しだけ乗せて食すことを推奨します。塩分が蕎麦に含まれる糖分を引き立て、まるで挽き立ての穀物を思わせる濃厚な甘みが口いっぱいに広がります。
合わせる麺つゆは、醤油の角をしっかりと寝かせた「本醸造醤油のかえし」に、本枯節と宗田節、昆布から取った濃厚な出汁を合わせた「辛口(からくち)のつゆ」が最適です。薄い甘口のつゆにドップリと浸してしまうと蕎麦の香りがかき消されてしまいます。麺の先3分の1程度をつゆにちょんと浸し、一気に啜り上げることで、出汁の旨味と蕎麦の香りが口の中で完璧なハーモニーを奏でます。わさびをつゆに溶かさず、蕎麦の上に少量乗せて食べるのも香りを損なわないための基本技術です。
外食シーンにおける最新トレンドも見逃せません。現在、都心部を中心に高圧押し出し式の特注十割製麺機を導入し、打ち立て・茹で立ての純国産十割そばをリーズナブルに提供する新世代のファストカジュアル蕎麦店が急速に支持を広げています。さらに、北海道産「キタワセ」や茨城県産「常陸秋そば」、福井県産「在来種」といった産地や品種の違いをワインのように楽しむ「シングルオリジン蕎麦」を提供する専門店も増加しており、十割そばの奥深い世界はかつてない多様化を見せています。