愛猫の歯が抜けた際、最初に見極めるべき分岐点は「現在の月齢と年齢」にあります。同じ「抜け落ちた」という事象であっても、生後数か月の幼猫と数年を共に過ごした成猫とでは、身体で起きているメカニズムが根本から異なるためです。
まず、生後3か月から7か月頃に起きる現象であれば、多くのケースで猫の歯の生え変わり時期に伴う自然な乳歯脱落です。猫の乳歯は全26本あり、生後数週から生え始め、生後半年を境に全30本の永久歯へと順次バトンタッチされます。この時期の脱落は生理現象そのものであり、過度な心配はいりません。多くは食事中やおもちゃで遊んでいる最中に抜け、そのまま気づかずに飲み込んでしまうことも珍しくありません。
一方で、1歳を過ぎた成猫の歯が抜ける原因は、外傷や事故を除けば、ほぼ100%が後天性の口腔疾患に起因します。猫の永久歯は人間と同様、一度抜けたら二度と生えてきません。健康な歯槽骨にしっかりと植立している歯が抜け落ちるということは、それを支える土台が感染や炎症によって物理的に破壊された結果を意味します。
さらに警戒すべきは、7歳から10歳を超えるシニア期における脱落です。一般に「年を取ったから自然に歯が抜けた」と解釈されがちですが、老猫の歯が抜ける理由の大半は加齢現象そのものではなく、長年蓄積・放置されてきた慢性歯周病の末期症状です。骨が溶け、歯根部が腐食した結果として脱落に至っているケースが大半を占めるため、放置すれば細菌が血流に乗って心臓や腎臓へ波及する二次リスクへと直結します。