アマチュア投手のフォークで最も危険なのが、高めにすっぽ抜けて絶好のホームランボールになる失投です。抜け球が生まれる構造的欠陥の多くは、「指先でボールを押し出そうとする」「抜こうとして腕の振りを緩めてしまう」という動作に起因しています。
抜け球を防ぐリリースのコツは、直球とまったく同じアームアングルと力感で腕を振り抜くことに尽きます。フォークは「指先で小細工して変化させる球」ではなく、「直球の腕振りの勢いで、指の間からボールが自然にスポンと前方に滑り出る球」です。リリースゾーンの直前まで人差し指と中指でしっかりボールをホールドし、最後の瞬間に手首のコックを固めすぎず、腕の内旋運動に任せてボールを前方に放り出す感覚が不可欠となります。
歴史に名を刻む名投手たちの証言は、このリリースの真理を雄弁に物語っています。
近鉄やドジャースで伝説を残した野茂英雄のフォークの投げ方は、極限まで指の奥深くにボールを挟み込み、全身をバネのように使ったトルネード投法から「地面へ叩きつける」イメージで投げ下ろすスタイルでした。自著や当時の特番インタビューにおいて野茂氏は「抜こうと思って投げたことは一度もない。真っ直ぐ以上に腕を強く振るからこそ、ボールが指の間を抜けていく」と述懐しています。
一方、メジャーで旋風を巻き起こす千賀滉大のお化けフォークは、親指を薬指側へ深く添え、リリース時に人差し指からボールが抜ける瞬間まで手首の角度をニュートラルに維持する点に特徴があります。指先で回転をかけるのではなく、ボールの軌道を直球のトンネルに長く通すことで打者の判断を極限まで遅らせます。
そして令和の怪物・佐々木朗希の高速フォークは、驚異的な球速(140km/h台後半)を誇ります。佐々木投手は指を極端に深く挟み込まず、浅めのフォークグリップから直球と寸分違わぬ猛烈な前腕の内旋スピードで振り抜きます。ボールが指から離れる瞬間の初速が極めて高いため、打者はストレートへの対応を余儀なくされ、バットを止める暇もなく空振りを奪われてしまうのです。