映画の核心部ともいえる丘の上の風景。多くのファンが真っ先に目指すのが、天沢聖司の祖父が営むアンティークショップ「地球屋」が存在したとされる高台の円形交差点です。多摩市桜ヶ丘4丁目に位置する桜ヶ丘ロータリー現在の景観は、映画に登場したラウンドアバウトの構造をそのまま保っており、中央の緑地帯を囲むように美しい並木と店舗が並びます。
長年ファンの間で探訪が続く聖蹟桜ヶ丘地球屋モデルの真相について、スタジオジブリ公式資料や当時の制作スタッフの証言を検証すると、外観の建物そのものが特定の1軒として実在したわけではありません。近藤喜文監督や宮崎駿プロデューサーらは、このロータリーの独特な空間配置に着想を得て、ヨーロッパ風のアトリエ兼ショップという架空の建物を画面上に構築しました。現在、このロータリーの一角で巡礼者を温かく迎え続けているのがノア洋菓子店耳をすませばのファンコミュニティです。店内には全国から訪れたファンが思い思いにメッセージを綴った「耳すま思い出ノート」が数十冊以上保管されており、作中に登場するロータリーを模した焼き菓子を手に、作品への愛を語り合う場として定着しています。
一方、物語屈指の名場面として語り継がれる金比羅神社告白シーンの舞台も、ほぼ当時の姿のまま住宅街の一角にひっそりと鎮座しています。野球部の杉村が雫を呼び出し、不器用に自らの恋心を伝えたあの小さな境内です。参道から数段の石段を上ると、朱色の小さな祠とおみくじ掛けが現れ、二人が交わしたぎこちなくも切ない会話の空気感が今にも蘇るかのような静寂に包まれています。観光地化されすぎず、地域の鎮守として大切に維持されているからこそ、訪れる人々はスクリーンの記憶を鮮明に呼び覚ますことができます。