ハスキーと暮らす家庭が直面する特徴的な習性のひとつが、「遠吠え(ハウリング)」です。一般的な家庭犬のように「ワンワン」と鋭く警戒吠えをする頻度は少ない反面、救急車のサイレン、特定の音楽、あるいは飼い主の帰宅や呼びかけに反応して、天を仰ぎながら「ワオーン」と朗々と歌うように声を張り上げる姿が頻繁に観察されます。
ハスキーが遠吠えをする理由には、進化生態学的な明確な背景があります。近年の遺伝子解析研究において、シベリアンハスキーはチャウチャウや秋田犬などと並び、全犬種の中でもオオカミに最も近い遺伝子構造を残しているグループに属していることが判明しています。オオカミの群れにおいて遠吠えは、視界の効かない広大な雪原や森林で離れた仲間と位置を確認し合い、群れの連帯感を再確認するための不可欠な通信手段でした。
現代の家庭環境においても、彼らは遠吠えを通じて「自分はここにいる」「仲間(飼い主)の存在を認識している」というメッセージを発信しています。また、留守番中の寂しさを紛らわせるため、あるいは退屈によるストレスを発散するために遠吠えを行うケースも珍しくありません。この独自のコミュニケーション欲求を「騒音」として力づくで抑え込むのではなく、群れの一員として受け止め、寂しさを感じさせない環境づくりや適切な知育玩具による刺激を与える工夫が求められます。