「クローン病が完治した人は本当にいるのか?」という疑問に対する医学的な回答は、「病気の根本原因を完全に取り去る『根治(完治)』を果たした人は現在の医学界には存在しないが、病気の存在を忘れるほど健康な『寛解(かんかい)』を何十年も維持している人は数多く存在する」となります。
医学用語における「完治」とは、体質や免疫異常を含めた病気の因子が完全に消失し、投薬や通院を一切行わなくても二度と発症しない状態を指します。一方、クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)は、遺伝的要因、腸内細菌叢の乱れ、過剰な免疫応答、環境要因が複雑に絡み合って発症するため、現在の医療技術では発症原因そのものを完全にリセットすることはできません。
しかし、近年の消化器内科の臨床現場では、炎症性腸疾患(IBD)の克服に向けたパラダイムシフトが起きています。自覚症状がなくなる「臨床的寛解」にとどまらず、内視鏡検査で潰瘍や炎症が完全に消失した状態を確認する「粘膜治癒(内視鏡的寛解)」を達成できれば、健常者とまったく変わらないクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を長期間享受できます。一般の人が「あの人は完治した」と口にするケースの正体は、この高度な寛解維持に成功している状態です。